ベクトルの加法・スカラー倍

「ベクトルの加法・スカラー倍」— 定義・計算法・性質まとめ

1) 前提:何を“ベクトル”と呼ぶか

ベクトルは「大きさ」と「向き」をもつ量です。位置そのものではなく、点から点への“ずれ(変位)”として扱います。以下では主に実数成分のベクトル(Rn\mathbb{R}^n)を前提にします。


2) ベクトルの加法(和)

定義(作図・直感)

  • 頭合わせ法(head-to-tail)u\mathbf{u} の矢印の終点に v\mathbf{v} の始点を重ねると、その始点から終点へ伸びる矢印が u+v\mathbf{u}+\mathbf{v}

  • 平行四辺形の法則u\mathbf{u}v\mathbf{v} を隣辺とする平行四辺形の対角線が u+v\mathbf{u}+\mathbf{v}

成分表示(計算)

u=(u1,u2,,un), v=(v1,v2,,vn)u+v=(u1+v1, u2+v2, , un+vn).\mathbf{u}=(u_1,u_2,\dots,u_n),\ \mathbf{v}=(v_1,v_2,\dots,v_n) \quad\Rightarrow\quad \mathbf{u}+\mathbf{v}=(u_1+v_1,\ u_2+v_2,\ \dots,\ u_n+v_n).

(2,1)+(3,4)=(5,3),(1,0,2)+(2,5,1)=(1,5,3).(2,-1)+(3,4)=(5,3),\qquad (1,0,2)+(-2,5,1)=(-1,5,3).

重要な性質

  • 交換法則u+v=v+u\mathbf{u}+\mathbf{v}=\mathbf{v}+\mathbf{u}

  • 結合法則(u+v)+w=u+(v+w)(\mathbf{u}+\mathbf{v})+\mathbf{w}=\mathbf{u}+(\mathbf{v}+\mathbf{w})

  • 零ベクトルの存在0\mathbf{0} があって u+0=u\mathbf{u}+\mathbf{0}=\mathbf{u}

  • 逆元の存在u-\mathbf{u} があって u+(u)=0\mathbf{u}+(-\mathbf{u})=\mathbf{0}

  • 差の定義uv=u+(1)v\mathbf{u}-\mathbf{v}=\mathbf{u}+(-1)\mathbf{v}


3) スカラー倍(実数倍)

定義と直感

スカラー aRa\in\mathbb{R} とベクトル v\mathbf{v} に対し、ava\mathbf{v}

  • 大きさが a|a| 倍、

  • 方向は a>0a>0 なら同じ、a<0a<0 なら反対、

  • a=0a=0 なら零ベクトル
    になるベクトル。

成分表示(計算)

a(v1,v2,,vn)=(av1, av2, , avn).a\,(v_1,v_2,\dots,v_n)=(av_1,\ av_2,\ \dots,\ av_n).

2(2,1)=(4,2),0.5(3,4)=(1.5,2).2\,(2,-1)=(4,-2),\qquad -0.5\,(3,4)=(-1.5,-2).

重要な性質(分配・結合)

  • ベクトル和に分配a(u+v)=au+ava(\mathbf{u}+\mathbf{v})=a\mathbf{u}+a\mathbf{v}

  • スカラー和に分配(a+b)v=av+bv(a+b)\mathbf{v}=a\mathbf{v}+b\mathbf{v}

  • スカラーの結合a(bv)=(ab)va(b\mathbf{v})=(ab)\mathbf{v}

  • 単位元1v=v1\cdot\mathbf{v}=\mathbf{v}

  • 派生公式0v=00\cdot\mathbf{v}=\mathbf{0}, a0=0a\cdot\mathbf{0}=\mathbf{0}, (1)v=v(-1)\mathbf{v}=-\mathbf{v}

長さとの関係(任意のノルムでなく、ユークリッド長さの場合)

av=av.\|a\mathbf{v}\|=|a|\,\|\mathbf{v}\|.


4) 加法とスカラー倍の“組み合わせ”=線形結合

線形結合

au+bv(a,bR)a\mathbf{u}+b\mathbf{v}\quad(a,b\in\mathbb{R})

の形を線形結合と呼びます。幾何的には、原点を通る直線・平面・高次元超平面を表現する基本単位です。

  • 原点を通る直線{tvtR}\{t\mathbf{v}\mid t\in\mathbb{R}\}

  • 原点を通る平面(R3\mathbb{R}^3u,v\mathbf{u},\mathbf{v} が一次独立)
    {au+bva,bR}\{a\mathbf{u}+b\mathbf{v}\mid a,b\in\mathbb{R}\}

アフィン結合と凸結合(応用感覚)

  • アフィン結合:係数の和が 1 の結合(例:su+(1s)vs\mathbf{u}+(1-s)\mathbf{v}

  • 凸結合:さらに 0s10\le s\le1。線分上の点を表します。


5) 幾何的な見方の補足

  • u+v\mathbf{u}+\mathbf{v} は「連続した変位の合成」。

  • uv\mathbf{u}-\mathbf{v} は「u\mathbf{u}v\mathbf{v} の差分の変位」。

  • スカラー倍は「拡大・縮小と向きの反転」。

  • 平行四辺形・三角形の作図ルールを覚えると、図形問題でのベクトル計算が直感化できます。


6) 次元整合・単位の注意

  • 次元(成分の個数)が一致していないベクトルは加減できません。

  • 物理量として用いる場合は単位の整合も重要(例:m/s\mathrm{m/s}m\mathrm{m} は加算不可)。


7) 練習例(計算と性質の確認)

  1. u=(1,2,1), v=(2,3,4)\mathbf{u}=(1,2,-1),\ \mathbf{v}=(2,-3,4) とする。

    • u+v=(3,1,3)\mathbf{u}+\mathbf{v}=(3,-1,3)

    • 2uv=2(1,2,1)(2,3,4)=(2,4,2)(2,3,4)=(0,7,6)2\mathbf{u}-\mathbf{v}=2(1,2,-1)-(2,-3,4)=(2,4,-2)-(2,-3,4)=(0,7,-6)

  2. a=(3,0), b=(1,2)\mathbf{a}=(3,0),\ \mathbf{b}=(-1,2)sRs\in\mathbb{R} について、

    • (1s)a+sb=(34s, 2s)(1-s)\mathbf{a}+s\mathbf{b}=(3-4s,\ 2s)

    • 0s10\le s\le1 なら a\mathbf{a}b\mathbf{b} を結ぶ線分上の点。


8) 要点の暗記リスト

  • 加法:成分ごとに足す。平行四辺形・頭合わせで図示。

  • スカラー倍:大きさは a|a| 倍、向きは符号で決まる。

  • 分配・結合・単位元・逆元:上の性質は必修。

  • 線形結合:空間・直線・平面の表現の基本形。

  • uv=u+(1)v\mathbf{u}-\mathbf{v}=\mathbf{u}+(-1)\mathbf{v}

  • 長さav=av\|a\mathbf{v}\|=|a|\,\|\mathbf{v}\|(ユークリッド長さ)。

この二つの操作(加法とスカラー倍)が満たす性質が、線形代数の出発点である「ベクトル空間」の公理です。ここを確実に押さえると、後の一次独立・基底・線形変換・行列計算へスムーズに進めます。

ChatGPT5 生成日:2025/09/17