エントロピーとクロスエントロピー

機械学習および強化学習における情報理論の概念は、確率分布の比較や方策の探索において非常に重要です。その中でも特に重要な概念である**エントロピー(entropy)クロスエントロピー(cross entropy)**について、以下に詳しく説明します。


1. エントロピー(Entropy)

定義

エントロピーは、確率分布の不確実性(ランダム性)の尺度です。シャノン(Claude Shannon)が定式化したもので、確率分布 PP に対して次のように定義されます:

H(P)=xXP(x)logP(x)H(P) = – \sum_{x \in \mathcal{X}} P(x) \log P(x)

ここで:

  • X\mathcal{X} は取り得るすべての値(例:行動や状態)、

  • P(x)P(x) は事象 xx の確率です。

意味

  • エントロピーが高い → 予測が困難(分布がフラット)

  • エントロピーが低い → 予測が容易(特定の値に集中)

強化学習での応用

  • エントロピーは**方策の探索性(exploration)**を促す指標として使われます。

  • 方策勾配法(例:REINFORCE)では、**エントロピー正則化(entropy regularization)**を報酬に加えて、方策が極端に確定的になるのを防ぎます。

Objective=E[報酬]+βH(π(s))\text{Objective} = \mathbb{E}[\text{報酬}] + \beta H(\pi(\cdot|s))


2. クロスエントロピー(Cross Entropy)

定義

クロスエントロピーは、ある「真の分布」 PP を「予測分布」 QQ で表現したときの情報量を測る尺度です:

H(P,Q)=xXP(x)logQ(x)H(P, Q) = – \sum_{x \in \mathcal{X}} P(x) \log Q(x)

  • PP:真の分布(例:実際に起こる行動の確率)

  • QQ:予測分布(例:ニューラルネットが出力する行動確率)

関係性

  • クロスエントロピーは、**エントロピーとKLダイバージェンス(相対エントロピー)**の和として表現されます:

H(P,Q)=H(P)+DKL(PQ)H(P, Q) = H(P) + D_{\mathrm{KL}}(P \| Q)

したがって、クロスエントロピーが小さいほど、Q は P に近いといえます。

強化学習・機械学習での応用

  • 教師あり学習では、分類問題の損失関数としてよく使用されます(ソフトマックス+クロスエントロピー)。

  • 強化学習では、行動のログ確率に基づく損失や、**方策の模倣学習(behavior cloning)**で使われます。


まとめ

指標 数式 主な意味 応用例
エントロピー H(P)=P(x)logP(x)H(P) = -\sum P(x)\log P(x) 不確実性の大きさ 探索性の向上(方策の多様性)
クロスエントロピー H(P,Q)=P(x)logQ(x)H(P, Q) = -\sum P(x)\log Q(x) 真の分布 P を予測分布 Q で近似したコスト 損失関数、模倣学習

これらの概念は、強化学習における方策の最適化や安定性の向上に不可欠です。特に、エントロピーを報酬関数に組み込むことで、探索と活用のバランスをとるのが代表的な使い方です。

生成日:2025/06/01